副業20万円以下、確定申告すると損?住民税申告との違いと「所得税5%の罠」を徹底解説【育休・ボーナスありのケースも】
「副業の所得が20万円以下なら、何もしなくていいんだよね?」 「確定申告をした方が、住民税の申告も一緒にできて楽じゃない?」
副業を始めたばかりの方が陥りやすいのが、この「20万円ルール」の落とし穴です。実は、所得税(国税)の確定申告が不要でも、住民税(地方税)の申告は1円から必要だということをご存じでしょうか。
さらに、「所得税率の方が低いから、あえて確定申告した方がお得」という考えは、実は「本来払わなくてよい税金を余計に払う」結果を招く可能性があります。本記事では、副業収入(雑所得)が20万円以下の場合、「確定申告」と「住民税申告」のどちらを選ぶのが金銭的に正解なのか、育休中の方などのケーススタディを交えて分かりやすく解説します。
「20万円ルール」の誤解を解く
まず、大前提となるルールを整理しましょう。
会社員(給与所得者)が副業をした場合、副業の「所得(売上-経費)」が年間20万円以下であれば、税務署への確定申告は不要です。これは、少額の所得に対して税務署の手続きを省くための特例措置です。
しかし、これはあくまで「所得税(国税)」の話です。お住まいの自治体に納める「住民税(地方税)」にはこの特例がなく、所得が1円でもあれば申告が必要となります。
- 所得税: 20万円以下なら申告不要(特例)
- 住民税: 金額に関わらず申告必要
- 国税庁:副収入などがある方の確定申告
「所得税5%」と「住民税10%」の罠
よくある疑問に、「所得税は税率が低い(5%〜)から、住民税(10%)だけ払うより、確定申告をした方が得なのでは?」というものがあります。
結論から言うと、これは誤りです。
なぜなら、税金は「どちらか安い方を払う」選択制ではないからです。確定申告をした場合、以下のようになります。
- 確定申告をする場合:
- 所得税(5%〜)がかかる
- データが自治体に送られ、住民税(10%)もかかる
- 合計負担:約15%〜
- 住民税の申告のみする場合(20万円以下):
- 所得税の申告不要制度を使うため、所得税は0円
- 住民税(10%)のみかかる
- 合計負担:10%
つまり、副業の所得が20万円以下で、かつ報酬から税金が天引き(源泉徴収)されていない場合、あえて確定申告をすると、払わなくてもよかった所得税(5%分)を余計に払うことになってしまいます。
よって、「住民税の申告のみ」を行うのが、金銭的には最もお得(支出が少ない)というケースが多いのです。
ケーススタディ:育休中で賞与ありの場合
では、具体的なシチュエーションで考えてみましょう。
- 本業: 正社員(育休中だが賞与あり、年末調整済み)
- 副業: 美容系の施術・物販(所得20万円以下、源泉徴収なし)
- その他: 医療費控除なし、株は特定口座(源泉あり)
この場合、どうすべきでしょうか?
① 副業の所得区分は?
エステや物販などの小規模な副業は、基本的に「雑所得」になります。開業届を出して本格的に帳簿をつけているなら「事業所得」の可能性もありますが、お小遣い稼ぎ程度なら雑所得が一般的です。
② 確定申告するメリットはある?
今回のケースでは、副業収入から税金が引かれていない(源泉徴収なし)ため、確定申告をしても「税金が戻ってくる(還付)」ことはありません。むしろ前述の通り、追加で所得税を払うことになります。 また、本業で年末調整が済んでおり、医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などの「確定申告でなければ受けられない控除」がないため、わざわざ確定申告をするメリットはありません。
③ 正解の手続きは?
「お住まいの市区町村役場で、住民税の申告だけを行う」のが正解です。 多くの自治体では、郵送やネットで申告書を作成できるサービスを提供しています。「雑所得」の欄に副業の所得(売上-経費)を記入して提出すれば完了です。
気にするべきポイント
副業収入が20万円以下の場合、以下のフローチャートで判断するとシンプルです。
- 副業の報酬から、所得税が引かれているか?(源泉徴収)
- YES(引かれている)
- 確定申告をすれば、払いすぎた税金が戻ってくる可能性があります(還付申告)。
- NO(引かれていない)
- 確定申告をすると損をします(所得税が増えるため)。
- 住民税の申告のみ行いましょう。
- YES(引かれている)
- 本業以外の控除(医療費控除など)はあるか?
- YES
- どのみち確定申告が必要なので、ついでに副業分も申告します(20万円以下でも記載が必要)。
- NO
- 住民税の申告のみでOKです。
- YES
「ネットでできるから確定申告しちゃおう」と安易に手続きすると、本来払わなくて良い税金まで払うことになるかもしれません。ご自身の状況に合わせて、賢く手続きを選びましょう。
- 総務省:個人住民税
まとめ
副業所得が20万円以下の場合、安易に「確定申告」を選ぶのではなく、「源泉徴収の有無」と「控除の有無」を基準に判断することが、手元に残るお金を最大化する鍵となります。
今回の重要な判断ポイントを振り返りましょう。
- 「20万円ルール」は所得税のみ
- 住民税に特例はありません。金額に関わらず、お住まいの市区町村への申告は必須です。
- 確定申告で損をするケース
- 副業報酬から所得税が天引き(源泉徴収)されていない場合、確定申告をすると本来不要な所得税(5%〜)が発生し、住民税(10%)と合わせて負担が増えてしまいます。
- 「住民税の申告のみ」が賢い選択
- 源泉徴収がなく、他に医療費控除などの還付目的がないのであれば、役所での住民税申告のみに留めるのが最も支出を抑えられます。
「手続きが楽だから」と確定申告をしてしまう前に、まずはご自身の副業報酬の支払い明細を確認してみてください。正しい知識を持って、副業で得た大切な収入を守っていきましょう。
